行政、投資者、地元、外部専門家が
一致団結した温泉地経営への挑戦
山口県で最も古い歴史を持つ長門湯本温泉は、団体客から個人客への旅行形態のシフトなど近年の旅行ニーズの変化によって宿泊者が減少、活力を失っていました。その中で起こった老舗旅館の廃業、その危機感から長門市は公費で廃業した旅館の跡地を購入、建物を解体し、跡地へ星野リゾートを誘致。さらには星野リゾートと連携し、2016年8月に温泉街の再生のために長門湯本観光まちづくり計画を策定しました。
ハートビートプランは2016年より4年超に渡って、この計画を実現する公民連携の方針や推進体制を提案するとともに、実務提案チームとして設置された行政・地元事業者・専門家からなるデザイン会議の司令塔として、プロジェクト全体のコーディネート、推進の役割を担ってきました。
温泉街の再生に向け、①公共空間を圧倒的に使いこなす②コア事業(恩湯)を民間事業で成功させる③既存地域事業者の活性化(リノベ支援)④新規事業者誘致を4つの柱として設定。コア事業となる恩湯の建替えについては、民設民営の方針を打ち出し、事業化やファイナンス支援まで関わり、地元の次世代経営者が自らの手で実現しました。それと並行し、まちや公共空間を「つかう」目線から検討をスタート、ハードデザイン「つくる」や運営主体・仕組み「育む」に反映させました。
川床設置などの河川活用やその安全な運用、交通ルールや道路活用、夜間照明などは、すべて地域が参加する社会実験を通じて価値と課題を共有し、常設につなげています。また、生活者や従業員の暮らしが楽しく、固有の文化になることを目指し、量よりも質を高め、経済が持続する温泉地を目指すKPIを設定。これらを実現するための組織としてDMOとエリアマネジメントの両方を担う「長門湯本温泉まち株式会社」が設立され、入湯税かさ上げによる地域再投資の財源を確保し、また外部評価の枠組みを整えました。これにより、持続可能な温泉街に向けた、地域が主体の観光地経営をの仕組みを実現化させました。