長門湯本温泉観光まちづくり事業推進

期 間: H.28 ~ 継続中

□所在地:
山口県長門市

□期間:
2016年~継続中

□テーマ:
公共空間のリノベーション/エリアマネジメント/事業化支援/市民によるまちづくり支援/地域ルール導入

□エリア特性:
水辺/観光地/集落

□内容
・まちづくり計画の事業推進・コーディネート
・観光地経営の戦略立案
・公共空間活用方針の提案と利活用スキームの構築
・公共空間活用社会実験の企画運営
・地域主体の発掘
・民間投資誘発のための条件・制度の検討

温泉街の低迷と民間投資主体によるマスタープランの策定
 長門湯本温泉は山口県の日本海側に位置する長門市にあり、山口県では最も古い歴史を持つ温泉街です。最盛期には年間39万人もの観光客が訪れていましたが、近年、旅行スタイルの変化などにより観光客が減少、最盛期の半数以下となり、150年の歴史を有する老舗ホテルが廃業してしまう事態となりました。
 この温泉街の衰退に歯止めをかけるべく、2016年8月に「長門湯本温泉観光まちづくり計画」が策定されることになります。この策定に当たっては、温泉街再生に向けて誘致を行った、民間投資主体である星野リゾートと協働し、行政的なマスタープランとは一線を画す、観光客のニーズを捉えた計画を策定しました。この計画では全国TOP10入りの温泉街となることを目標にすること、そのために、そぞろ歩きの出来る温泉街となるようにランドスケープの作り込みと回遊性を高める工夫をすることが明記されています。

マスタープランの実現に向けたプロジェクトチームの組成と事業シナリオ
 弊社はこの「長門湯本温泉観光まちづくり計画」を具体的に実現していくためプロジェクト推進を担うことになり、2016年度にはプロジェクト推進体制の構築、官民の事業分担検討、TOP10を目指すための考え方を提案しました。
 プロジェクトの推進体制としては、デザインや都市計画、金融等の専門家と、地元の若手事業者による全体方針を立案する「デザイン会議」と、市長を座長に地元の各長による最終的な意思決定を行う「推進会議」を組成し、弊社は2017年度の体制構築後はデザイン会議の司令塔として、全体の推進方針をまとめる立場として関わっていくことになります。
 また、温泉街の中心に位置する2つの公営外湯事業に関して、赤字が続く現状を脱却し温泉街の新たな顔として生まれ変わるために事業性の検証を行い、2つのうちメインの外湯である「恩湯」を民設民営で建て替え、もう一つの「礼湯」は取り壊し、今後の状況に応じて建設を検討する方針を打ち出し、マスタープランに描かれた土産物屋や登り窯といったその他の施設も整備の見直しを行い、外湯及び飲食・物販施設を民間、インフラ整備を行政という、官民の事業分担を整理しました。
 そして、①圧倒的な公共空間の使いこなし、②外湯事業の自立収益化・段階的発展、③地域内事業者の活性化、④新規コンテンツの継続的な組成を、TOP10を目指すシナリオとして提案し、これに基づき2017年度以降具体的な検討を行っていくことになります。

新規事業の創出と社会実験による検証
 2017年度~2019年度にかけては、温泉街の将来像を地域内外で共有することを目的に、①河川空間活用、②交通再編、③照明計画の視点で社会実験を実施・検証しています。
 河川空間の活用では初年度は中心部を流れる河川をより楽しむために、河川上に川床と置き座という二種類の空間を常設に耐えうる構造で設置。安全性や運用方法を2年に渡り検証し、その後常設となっています。交通再編では通過交通や路上駐車を抑制し、観光客が安全に歩ける環境を目指して歩車共存の空間のありかたを検討するために、1年目は一方通行と相互通行の比較、2年目は離合スペースを設けたすれ違いの検証を行い、道路形状を決定。3年目には道路への設置物や管理運営方法の検証を行い、これらを設計へ反映しています。照明計画では夜のそぞろ歩きを誘発するような景観上ポイントになる箇所のライトアップや、地域のおもてなしの明かりを設置して、夜の温泉街の雰囲気を形成し、こちらも設計へと反映しています。また、これらの検証と合わせて、2017、2018年度には地域内外の魅力的な店舗やプログラムが出店する「おとずれリバーフェスタ」を開催。多くの人で賑わう温泉街の将来イメージを共有しました。
 これらの検証結果を踏まえて、地元住民の方とのWSや河川や道路の管理者との協議、デザイン会議での議論を重ね、ハード整備への反映や公共空間の管理運営体制・ルール作りへと反映させています。
 また、社会実験に先んじて2017年7月には地元旅館や萩焼の窯元の跡継ぎなどの若手が事業主となり、空き家となっていた民家をリノベ―ションして、温泉街に20年以上ぶりに新規開店となる萩焼で飲食を楽しめるカフェ「cafe&pottery音」がオープンします。この動きを皮切りに少しずつまちに変化が出ていくことになります。

地元事業者による外湯事業と公共空間の管理・運営スキーム
 2017年度後半には民設民営で建替えという方針が決定した外湯「恩湯」の事業者のプロポーザルがスタートします。ここに「cafe&pottery音」でも事業主となった旅館の若手や、地元事業者が一緒になり「長門湯守株式会社」を設立しプロポーザルに手を挙げ、事業者として選定されることとなります。またこの事業に対し、地元の金融機関である山口銀行がプロジェクトファイナンスでの融資を決定、長門湯本温泉での事業を支援する「長門湯本温泉街づくりファンド」の設立と併せて、地元金融機関による地元事業の支援が始まりました。
 一方で行政によって整備される公共空間についても、地元のまちづくり協議会や川床を活用したい事業者などが「長門湯本オソト活用協議会」を組成し、今までの社会実験での検証結果をもとに、民間による管理・運営・活用を始めています。 
河川では、2018年度に温泉街の河川区域が河川敷地占用許可準則に基づく都市・地域再生等利用区域の指定を受け、川床や置き座が常設化され、民間占用主体としての管理運営が始まっています。道路では2019年度夏に社会実験の実施主体としてベンチやプランターといった設置物のデザインについての検証を行い、2019年度末の道路協力団体としての指定と設置を目指しています。

景観形成とリノベーションの推進
 また魅力的な温泉街の景観形成と維持のために景観ルールの検討も行われています。温泉街の景観としてどのようなものがふさわしいか、またどのようなものは出来て欲しくないかなどを、住民WSを重ね議論し、2018年度には目指すべき温泉街の姿を描いた「長門湯本温泉景観ガイドライン」を策定しました。それと併せて地元での景観協定の検討も行い、現在協定の締結に向けて進んでおり、官民両面からの景観形成を目指しています。
 これらの景観形成や事業創出を支援するために、デザイン会議メンバーによるリノベーション推進プロジェクトである「おとずれリノベプロジェクト」が実施されています。これは民間のリノベーションに専門家が協力してプランニングやアドバイスを行うもので、現在5件のプロジェクトが進行しています。

魅力的な温泉街の形成とエリア全体でのマネジメント
 これらハード整備と民間事業の両方が進む中で、現在では持続的な公共空間の維持管理・活用や民間事業創出を行い、エリア全体を経営し価値を高めるためのエリアマネジメントの仕組みづくりが検討されています。
 継続的なエリア経営のためには財源と担い手が必要です。財源に関しては観光客が負担する入湯税をかさ上げし、それを充てることが地元の湯本温泉旅館協同組合より要望され、2019年末の議会で議決されました。また担い手としては、「湯本温泉旅館協同組合」、「長門湯守株式会社」、「長門湯本オソト活用協議会」の3団体によって、地域主体のエリアマネジメント法人 「長門湯本温泉まち株式会社」が設立されることが決定しています。
 今後は、デザイン会議での取り組みから、このエリアマネジメント団体を中心にエリア全体で温泉街としての価値を高めていく取り組みへとプロジェクトの推進が移行されていくことになります。この取り組みを外部の有識者とともに評価・支援していき、TOP10入りするような魅力的な温泉街の形成と、その持続を目指していきます。

●2016年
     

●2017年
・市策定のまちづくり計画推進のためのアクションプランの策定
・観光地経営のための戦略の立案と、それらを検証する評価指標の設定
・公共空間活用アイディアの検討と、利活用に必要なスキームの検討・構築
・検討内容を試行するための温泉街を舞台とした実証実験の企画運営
・事業内容の検討及び意思決定のための会議体の運営支援
・地域意識醸成のためのワークショップの実施

   

●2018年
・市策定のまちづくり計画推進のためのアクションプランの策定
・観光地経営戦略の仕組みづくり及び経営体の検討
・事業内容の検討及び意思決定のための会議体の運営支援
・公共空間活用の方針検討及び主体構築支援
・検討内容試行のための実証実験の企画運営
・シーズナリティの平準化策の検討
・地域意識醸成のためのワークショップの実施

     

●2019年
・まちづくり計画の事業推進・コーディネート
・観光地経営戦略の検討
・エリアマネジメント必要機能の設定、主体となる法人設立支援、入湯税活用地域再投資による財源&外部評価委員会の枠組み提案
・河川&道路の公共空間活用組織の支援、道路協力団体指定へ
・社会実験の実施支援