マチメグリ

【マチメグリ】ワールドツアーレポート:上田編『メルボルンのリバビリティについて』

2019年6月3日


2019年5月5日(日)~5月11日(土)までの1週間、社員研修として、オーストラリア・メルボルンへ行ってきました。
その様子をレポートにしてお届けします。

レポート第1弾は、上田による「メルボルンのリバビリティについて」です。

はじめに

日々快適に大阪で暮らしているわたしは、リバブルシティって呼ばれるまちはどんな風に作られていて、どんな風に使われているんだろうと思いを馳せていました。
しかし、シティを歩いた最初の感想は、車が多いということ。実際の多い・少ないというより、道路上に駐車スペースがあるので、目に見える車の数がとても多い。シティの真ん中は無料でトラムが使えると聞いていたのになぜ!?
もうひとつは、まちを歩いていて、自分が観光客か住民か誰にもわからないということ。それほど、多種多様な民族がまちに溶け込んでいました。まったくアウェー感を感じないので、これは暮らしやすさのポイントかもしれません。
そこで、わたしは交通施策や暮らす人・コミュニティ点から、メルボルンのリバビリティについて考察してみました。

 

1.交通施策について

シティの道路は、アスファルトの車道も、タイルのような歩道も、すべて黒で統一されていて、洗練された雰囲気でとてもきれいでした。

少し古いデータですが、2011年国勢調査では、メルボルン都市圏の主な通勤手段は、鉄道が約116千人、送り迎えが約84千人、徒歩が約56千人、トラムが約42千人であるのに対して、車が約1,116千人と10倍以上となっています。そりゃあ見える車が多いはず。平均自動車通勤時間は片道32分(2010年、IBM調査結果)だそうですので、意外と近郊に住んで、都心へ出勤するというスタイルのようです。
しかし、路上駐車が認められているため、交通量の多い車道を、車・トラム・自転車・路上駐車といろんな車両が利用しているのです。歩道は少し段差がつけられているだけで、ボラードや柵もなく、少し安全面を心配してしまいます。

 

 

2017年に改定されたメルボルンの都市計画「プラン・メルボルン(2017-2050)」では、トラムや自転車の専用道路を設けたり、駐車場を増設することが打ち出されています。

たしかに自転車専用道路は既に整備が進んでいました。でも、車の左折レーンがあるところでは、自転車レーンと車の左折レーンが交差していて、これはこれで危険な気がしますが。

 

ここで特筆したいのが、自転車置き場とアウトドアダイニングのこと。
まず、自転車置き場やベンチ、ごみ箱がまちの至る所に設置されているのですが、これらもすべてシルバーフレームで統一されていて洗練度がぐっと高まっています。

 

 

税金でなんと贅沢に作っていることと思っていたら、これは「開発貢献制度(Development Contribution)」に基づいて民間が整備しているものが多いそうです。ビクトリア州の「都市計画・環境法(PART 3B, Planning and Environment Act 1987)」では、自治体が建築許可を行う際に、開発業者に対して開発用インフラやコミュニティ用インフラの整備を要請できると規定されています。デザインコードに従い、実際の整備は民間事業者が行っているのですね。

そんな美しい歩行者空間には、予習していたとおり路面店がアウトドアダイニングを出していて、人の居る風景が作り出されていました。車道側ギリギリまでせり出したアウトドアダイニングスペース。つまり[店舗→歩道→アウトドアダイニング→車道]という順番です。車道との間に壁や雨除けを設けているものもありました。長居するレストランのアウトドアダイニングには、パラソルヒーターが取り付けられているところも。商店街は以外と空き店舗率も高かったですが、アウトドアダイニング付きの居抜き店舗もありました。

 

 

 

 

行政がデザインコードを決めたり歩道の使い方を柔軟にしたりする中で、開発事業者や地元の店舗がまちのインフラと賑わいづくりに協力していく。歩きやすく、通りたくなるストリートやレーン(小路)は2050年に向けてもっと進化していくのかもしれません。

前述の「プラン・メルボルン」では、人口増加に対応するため、いくつかのサバーブに分けて「20分圏内のまち」を目指してコンパクトシティ化を進めています。都心近郊や郊外にも都市機能を整備してコミュニティを形成し、多核多心型都市を目指しているそうです。
次項では、暮らす人やコミュニティについてみてみたいと思います。

2.移民街について

2011年国勢調査では、メルボルン都市圏に住んでいる人のうち海外で生まれた人の出身国は、1位がイギリス(約134千人)、2位がインド(約107千人)、3位が中国本土(約91千人)となっていて、次いでイタリア、ニュージーランド、ベトナム、ギリシャだったそうです。日本は第41位でした。
シティの周辺には特定の国の移民がまとまって暮らすサバーブが幾つかあります。わたしが立ち寄ったフッツクレイという地域は、ベトナムやアフリカ、インド系の移民が多く、人口の59.0%が海外生まれで、二世まで含めると73.8%だそうです(2011年国勢調査)。

 

残念ながらフッツクレイ・マーケットは閉店していましたが、エスニック系の飲食店などが多く立ち並んでいました。ランチにサンドイッチを注文したら、甘めのBBQソースがすごく美味しかったです(「パクチー」が通じなくて困りました)。

 

 

トラムが通っていますが、シティとは少し外観も異なり、ほどよい下町の雰囲気でした。海外は屋外での飲酒はNGのところが多いと思いますが、この辺りも「飲酒も、開いたお酒の容器を持っていても、だめ」という看板が多かったです。アウトドアダイニングもあまり見かけなかったので、フッツクレイでは外の空気を吸いながらお酒は飲めないのかもしれません。

 

 

ほかにも、メルボルンにはギリシャ系移民の多いオークレー、中華系移民の多いボックス・ヒルなどのサバーブがあるそうです。大阪にも鶴橋や大正のような特徴的な文化・コミュニティをもつ地域がありますが、フッツクレイなども国際都市メルボルンにあって特に文化情緒豊かな顔を見せていました。

 

3.コミュニティについて

シティに戻ってきて、CBD(Central Business District、中心業務地区)から少し北に外れたカールトンへお酒を飲みに行ったら、近くにコミュニティセンターがあったと聞きました。CBDは大阪で言えば心斎橋のような商業エリアですが、カールトンは住宅街といった感じです。移民街のつぎは、移民かどうかに関わらずメルボルン市民がどこでコミュニティを作っているのか気になったので、翌日行ってみました。

前述の「開発貢献制度」では、開発事業者がコミュニティセンターを作ることもあるそうですが、ここ「Kathleen Syme Library and Community Centre」は、廃校になった幼稚園をリノベーションした施設だそうです。歴史的な、趣のある建築でした。
1階にはカフェが入っていて、入口の横にはベンチとテーブルがあり、学生らしい若者が勉強をしていました。まずここに驚きます。学生って、学校から帰ってきてこういうところで勉強するんですね。近くにはインターネットカフェもあるのに。

 

 

 

中に入ると、そこは図書館とコミュニティセンターが併設している施設でした。今日の催しが掲示板に表示され、パソコン教室に来ている高齢者や、絵本などがあるブースには小さいお子さんを連れてきたお母さんが居たりしました。映画を見れる視聴覚室のようなエリアもありました。

 

 

 

 

 

聞き伝えで知ったのですが、夕方には小学生の宿題をみてあげる時間もあるそうで、日本で言う学童保育のような仕組みも兼ねているよう。英会話クラスを開設しているコミュニティセンターもあるそうです。時間があれば、何かのクラスに参加してみたかったです。

「プラン・メルボルン」には、「20分圏内のまち」づくりに必要な要素として、住宅、仕事、緑、交通、病院など17項目が挙げられています。その中には、生涯学習や地域の学校、また高齢者の居場所なども位置づけられており、長期的な都市計画の施策として実現されているようです。

 

 

 

移民街やコミュニティセンターは、日本にも同じようなものがあります。コミュニティの形にフォーカスすれば、リバブルシティといってもそれほど大きな差はないのかもしれません。しかし、「20分圏内のまち」づくりを推進し、ローカルリビングのための施策を実行しているメルボルンでは、地元(ローカル)の中に意識的に多様な機会と選択肢が用意されている。だからこそ、世界中どこから来た市民にとってもリバビリティがあるのかも、と思いました。

(上田)

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